未経験でIT系会社転職するにあたり、経理の経験が活きて好条件求人があるITコンサルタントとして転職しました。大規模な会計システム(厳密にはERP)を導入する仕事でした。
経理職の経験がどんな場面で活きたのか、今回は原価計算という場面のことを書きます。
細かい原価計算の手法(FIFOとか、配賦方法とか)の知識はもちろんですが、特に重宝されたのは原価計算のその先を想定できるかでしたのでご紹介します。
生産・販売・在庫・会計管理が一つのシステムに
「原価計算のその先の想定」の話の前に、ERPのようなシステムを導入する前と後のお話をさせてください。
ERPを企業に導入する場合、ERPから別のERPへの乗り換えではなかったです。ERPを使っていない企業が初めてERPを導入というものでした。
導入前はシステム混在
営業部門:販売管理システム
生産部門:生産管理システム
倉庫部門:在庫管理システム
経理部門:会計管理システム
を使い……と1つの会社内に全く別の思想を持ったシステムが混在する状態です。
これの良いところは、それぞれの役割に特化したシステムなので痒いところに手が届くことです。
しかし悪いとこもあり、部門間の連携が困難ということです。
企業は複数の部門の活動が入り組んでいるのに、個々のシステムの連携がなく、スピーディに物事を判断するためのデータが揃っていないのです。
だから部門間のデータの共有がエクセルになってしまいます
経理的な視点だと、月次で在庫金額を計算するために原価計算をしますが、部門ごとに違うシステムだからそれぞれの部門にエクセルでデータを提出してもらいます。
そして複数のエクセルを色々と加工しまくって計算をしていきます。そしてエクセルで計算した結果を仕訳として会計システムに入力するという流れです。
複数のシステムが混在していると、転記ミスはもちろん、経営者に必要な情報が届くのに時間がかかりすぎます
1つのシステムで密な連携
システム混在状態から、会社全体で一つのシステム(ERP)に変更すると、こんなメリットがあります。
・部門間のデータ連携が自動&即時
・エクセルで集計して加工していた計算は、ルール化されシステムが行う
・経営者は必要な情報を即時&ドリルダウンしながら得られる
ではデメリットは何でしょうか。
・1つの部門の中で完結していたことが、他の部門にも影響する
・入力ルールが厳密に決められていないと、思わぬトラブルを自部門だけでなく他の部門に起こす
密な連携をしているから、一つの部門の入力データが他の部門のデータに影響を与えます
デメリットは、いかに上手くシステムを導入するかによって小さくすることができます。導入するITコンサルタントの腕によって、デメリットが大きくなってしまったりです。
経理職の経験の活かしどころ
経理職の経験が活きる場面は色々ありますが、特に原価というのは色んな部門が気にしている数字です。
標準原価計算をしているのであれば、標準原価を元に様々な業務がされますし、その標準原価の定期的な切り替えで原価が増えるのか減るのかは大きな関心です。
部門間の連携を密にできるERPのようなシステムを導入するときに、この重要な原価にまつわる知識というのは必須です。システム側で計算できるとはいえ、何をどうやって計算しているのか知っていないといけないです。
原価計算のその先
原価を計算するための流れは複数の部門をまたがっています。一つの部門が日々入力するデータが、複数の条件や計算によって原価に影響し、最終的に財務諸表に載る金額まで影響します。
一つのデータが最終的に財務諸表にどう影響するかを考えられることが重宝されました。経理職の経験者なら、色々な部門の数字を集約して財務諸表にまとめ上げることをしているので、何がどう影響するというは知識だけでなく実体験としても理解できているかと思います。
「なんで今月は在庫金額が膨れているんだろう」……と月次決算ごとに調べた経理職の経験が活きます。
大きな流れが分かっていると、システムを導入するときのカスタマイズで活きます。
「このカスタマイズをすると〇〇の部門に影響が出て、最終的に財務諸表にこんな影響が出る」という想定ができるので、カスタマイズの工夫ができます。
もし何も想定せずに、一つの部門の希望だけでカスタマイズすると、導入後のトラブルに繋がります。
まとめ
ERPや大規模な会計システムを導入するときの困難の一つに、それぞれの部門ごとに希望する機能が違うことが挙げられます。
システムが混在しているときは、集約の不便さはあっても、それぞれの部門にとって最適な機能が提供されています。
その従来の良かったところも最大限に残して、より良いシステムをITコンサルタントが導入できるかは……
の理解度によります。
その一例として原価計算をご紹介しました。
原価計算の基本的な仕組みや計算方法、計算のために必要なデータが何かを知っていることがまずは大きな強みでした。そして更に実務として原価計算を経験している経理職であれば、一つの部門が日々入力している数字が最終的に財務諸表にどう影響しているのかの流れを理解しています。
文系だし経理しかしたことないしIT系なんて……と思われる方へ
確かに大学でコンピュータサイエンスを学んでいるエンジニアに比べるとコーディング等の技術は劣ってしまいます。しかし、経理職の経験者だからこそ活かせる職種があるという参考になると嬉しいです。